ドコモとJR東海、200km/h以上で走行する新幹線との5G無線通信実験に成功
28GHzでここまでやったのは確かに世界初でしょうねえ。いやー、ようやるわ、って感じです(笑)。5Gってフレームの構成はLTEからさほど変わってないんですよね。なので、いろんなフィードバックだとか判断可能なタイミングだとかはせいぜい1ミリ秒のオーダー。一方、200km/h=56m/s、おおよそ60m/sとすると、周波数2GHzなら波長相当の距離を走るのに2.5ミリ秒。フェージングだのなんだのの伝播環境の変化はおおむね波長オーダーの距離変化で起こるので、2.5ミリ秒での変化ならなんとか1ミリ秒のオーダーの制御で成立させられます。しかし、これが28GHzとなると、波長オーダーの通過にかかる時間が0.18ミリ秒です。さすがに一桁違うとほぼ制御不能になると思ってよいと思います。システム的なプロアクティブな制御が難しいとなると、ここはもう、個別要素的なリアクティブな対処を積み上げていくしかないわけです。もちろん一番は、可能な限りアンテナ見通しを確保する基地局配置、それと、多素子アンテナ。実効受信面積を広げて「統計的に受信する」ことで制御限界以下の擾乱を打ち消してしまうわけです。いや、こんな話をしてると思い出すのが、PHSなんですね。後期のPHSは、割と新幹線でも普通に使えるようになっていました。ですが、PHS周波数はほぼ2GHz帯、に対して、PHSの制御オーダーは10ミリ秒です。つまり、2.5ミリ秒オーダーの擾乱に対して制御可能オーダーが一桁ずれてます。2GHzのPHSで新幹線に乗るのと28GHzの5Gで新幹線に乗るのはほぼ同じ関係なんですね。その時PHSでやってたのは、新幹線沿い見通しにアンテナを大量に立てて端末は空間ダイバシティはもちろん時間ダイバシティ、周波数ダイバシティも組み合わせた実質8素子アンテナでの豪華な受信をフルに使っていた状態だったはずです。あれでさえも「うわー変態だー」って思ってたくらいなわけで、今回のドコモ実験にもそこはかとなく変態の香りを感じている今日この頃です(笑)。